*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?14


「所有権移転」


買受人となった山田宅に、裁判所書記官から代金納付期限通知書がきた。

「別紙物件目録記載の不動産について、あなたに対する売却許可決定が確定し、代金納付期限が平成○○年○月○日午後2時と定められたので通知します。なおあなたが納付すべき代金の残額は次のとおりです。金○○○○円」という内容のものであった。

山田は、裁判所からもらった振込依頼書で、銀行から裁判所の預金口座あてに残額代金を振り込み、金融機関の領収印のある「保管金受入手続添付書・裁判所提出用」と「依頼人保管用」を受け取る。

代金納付期限通知書に同封されていた「保管金提出書」と上記「保管金受入手続添付書・裁判所提出用」を裁判所の出納課保管金係に提出し、出納課保管金係から「保管金受領証書」を受け取る。

あらかじめ、所有権移転登記をするから書類等をそろえておくようにとのことで山田は、住民票、印鑑(入札書に押した印鑑)、買い受けた不動産の最新の登記簿謄本、同不動産の固定資産評価証明書を準備、登録免許税(前もって裁判所で計算してくれる。裁判所の売店でも登録免許税としての収入印紙を売っている場合が多い)郵便切手(裁判所で計算してくれる)は裁判所の売店で購入する。

山田は、「保管金受領証書」と所有権移転登記関係書類を裁判所の民事部不動産競売係へ持参する。

ついに手続完了である。裁判所書記官が差押登記抹消、抵当権抹消、所有権移転登記をやってくれる。これだけは裁判所のスペシャルサービスである。山田は感謝していた。これ民間で、司法書士に依頼すればかなりかかるのである。

山田は、前の家主と借家人が取り交わした賃貸借契約書がどんなものか知らなかった。競売の3点セットにもなかった。借家人に会うためには必要である。担当の書記官にそのことを話すと、書記官が教えてくれた。

裁判所の横にある弁護士会館に行って、弁護士協同組合に、事件のすべての書類のコピーを頼めばやってくれるとのことであった。

山田は依頼した。でき上がったら郵送してくれるとのことで、かなり低廉でやってくれた。

あとは裁判所から送ってくれる所有権移転登記(権利証)等の登記済待ちである。(続)

*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?13


「落札」

執行官が事件番号順に次々と名前と金額を読み上げていく。ついに山田の入札した事件番号になった。入札者は5人であった。

結果、山田が651万円(売却基準価額比200%)で最高価買受申出人(落札人)になった。2位は400万円(同123%)3位は383万円(同118%)

山田は「しまった!」と思った。2位に比べるととんでもない金額であった。
2位でも130%を超えていなかった。

このあと、あらかじめ決定されている「売却決定期日」に、最高価買受申出人の山田に、不動産を売却するかどうか裁判所が決定します。

最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格を有しない場合など、一定の場合には、売却を許可されないことがありますが、普通は売却が許可され、最高価買受申出人は買受人となります。

山田はついに買受人に決定、完全な落札者になりました。


「解説」

入札金額の想定は非常に難しいものです。借家として買うから、明渡しの費用が不要であるとは一概にいえません。
買受人になって現場に行ったら、まったく別人が占有していたということもありうるわけです。そういうことも想定すれば、せいぜい130%がいいところでしょう。 (続)

*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?12



「開札」


山田は、不動産競売の開札を一度見てみたいと考えていた。

昔は非常に怖い世界で、暴力団の資金源になっていた。暗黒の世界で、一般人は近寄れなかったと聞いていた。

そのうえ、裁判所の執行官室の近くの廊下の壁に「暴力団に脅されたときは当裁判所か最寄の警察署に連絡してください。」との貼り紙があり、何となく気が重い場所でもあった。

今回は入札しているんだから、どんなことがあっても行くんだと自分に言い聞かせていた。

開札は午前9時30分からである。少し早めに開札会場に入った。かなりの人が来ていた。心を落ち着かせようと左から順にゆっくりと見渡していった。

赤子を抱いた若夫婦がいる。子連れの女性がいる。サラリーマンふうの男性がいる。
どう見ても暴力団ふうの若者がいる。競売代行業者の社員同士か心安く話しかけている。

定刻の9時30分、裁判所の執行官らしい人が、入札箱をあけて逆さにし、入札書の入っている小封筒を広い机の上にあけた。たくさんの小封筒で山盛りになった。

執行官らしき人は、入札箱の中がみんなに見えるように左から右に動かした。マジシャンがやるしぐさである。中には何も入っておりませんよということである。

たくさんの小封筒で山盛りになった机を取り囲んでいた裁判所の職員がいっせいに開封しだした。

入札書を取り出し、事件ごとにまとめていく。この間一般人は、しばらくその作業を見つめるだけである。

まとまりだした。執行官が事件番号順に次々と名前と金額を読み上げていく。(続)

*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?11


「入札」

入札保証金(売却基準価額の20%以上、その金額は物件情報に記載されている)の振込みである。

裁判所からもらってきた振込用紙に記入して銀行へ持参、振り込む。
銀行から「保管金受入手続添付書」裁判所提出用と「振込金(兼手数料)受取書」依頼人保管用の2枚を受け取る。

「入札保証金振込証明書」に所定の項目を記入する。裏面に上記銀行からもらってきた「保管金受入手続添付書」裁判所提出用を貼り付け割り印する。

執行官殿と記載された大封筒に上記「入札保証金振込証明書」を入れる。ほかに住民票も入れる。その他前回10で書いた添付書類があればそれも入れる。



「入札書」に所定の項目を記入、いよいよ金額記入である。

この金額を間違って、1桁大きな金額を記入して、落札されてしまった場合どうなるか?

期限までに代金納付手続を完了しないと、買受人は物件を買い受ける権利を失い、

入札の際に納めた保証金も返還されません。その保証金は、次回以降に不動産が売却されたときは、債権者等への配当の財源になります。

また、代金が納付されないときは、その不動産は再び売却に付されることになりますが、代金を納付しなかった買受人はその不動産を買い受けることができなくなります。入札して落札できたとしても、売却が許可されません。

こんなことを考えると慎重に数字を書かなければなりません。

もちろん入札価額の記入欄には、桁ごとに百億、十億、億、千万、百万、十万、万、千、百、十、円と丁寧に印刷されています。

それでも記入は慎重になります。山田は慎重に「651万円」と書いた。そして「入札書在中」と書いた小封筒に入れた。封をしないで大封筒に入れた。

「初めて入札手続をされる方は、印鑑漏れ等の不備が多く見受けられますので、
封をしないでそのまま執行官室窓口に持参される方が無難です。」と書いてあったので見てもらうために執行官室に持参した。

窓口で見てもらって提出した。入札手続き完了である。



解説

小封筒に封をして大封筒の中に入れて裁判所執行官室あて郵送してもいいんです。

しかし間違ったら入札できない場合があります。小封筒の中は入札書だけを入れて封をするのに、「入札保証金振込証明書」も入れてしまったとか、印鑑漏れ等あったら入札できなくなりますので注意が必要です。

そんな難しい書類ではないんです。簡単です。しかし不備があれば入札できない場合がありますので細心の注意が必要です。       (続)


*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?10


「期間入札の手続き」

山田は、閲覧で裁判所に行ったとき、執行官室で入札関係書類をもらっている。

執行官室では入札関係書類をセットにして置いてあり、誰でも自由にもらうことができます。

「添付書類の準備」

・個人の場合は住民票(発行から3か月以内のもの)

・法人の場合は資格証明書(発行から3か月以内のもの。会社の住民票みたいなもの)

・個人でも複数−−−共同入札(共有にする場合)の場合は、事前に「共同入札許可書」を執行官室窓口に申し出て、許可をもらっておく。

・農地を入札する場合は、買受適格証明書が必要です。
農地は、農地法により農業従事者でないと取得できないことになっています。

農業に関係のない専業サラリーマンは農地を取得できません。

買受適格証明書とは農業従事者であるという証明書です。
買受適格証明書は、市町村役場の農業委員会が発行してくれます。

都道府県を越えた場合は都道府県知事発行の証明書になります。
自宅と入札物件と離れている場合の農地の取得は難しくなりますので事前相談が必要になります。                      



山田は、単独名で入札、落札しても単独名で登記するつもりであったので、市町村役場へ行って、家族全員ではなく、山田だけの住民票の交付を受ける。  

家族と共有の場合は、家族全員の住民票が必要になります。そのほかに事前に「共同入札許可書」を執行官室窓口に申し出て、許可をもらっておく必要があります。

これはそんなに難しいものではなく、住民票とともに共同入札許可書を提出して、執行官が在室しておれば、待っている間に交付してもらえる。

もちろん入札物件は農地ではないので、添付書類は山田の住民票だけであった。                                  (続)


*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?9

*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?9


「入札金額の検討」

山田は、この物件を入札することにしました。

過去の落札価格を調べました。最高でも売却基準価額325万円の30%増しです。

中には、いい物件は2倍くらいで落札されている場合もあります。


しかし駅から300m(歩4分)なんて滅多に出るもんではない。土地値打ちにし

ても、2倍でもまだ安いと思いました。よしこれは2倍でいこう。325万x2=

650万 落札は1円でも高いほうに落ちる原則に従って+1万円、総合計651

万円に決定、手続きにとりかかりました。              (続)

*競売ドキュメント 俺は務所帰りや。お前か!この家を落札したのは?8


「再び現地調査」

法務局、市町村役場で調査、確認した書類を持って再び現地調査である。


・公図と現地が合っているか?地押しをする。 

公図は大まかな形、大体の地図と考えればいい。つまり現地と比べ並び方が合っている場合はOKである。

・水路(普通は青色)里道(りどう、公図を作ったときに存在した道のこと、普通は赤色)などから何軒目とか、田の場合は何枚目かとか順に物件まで押していく。このことを地押し調査といいます。

・分筆(1筆の土地を何筆かに分けること)されている場合公図に手入れされておればOK。

されずに公図がまだ1筆の場合は、調査してきた地積測量図と比べて現地が合っているか確認する。

・地積測量図の辺長(辺の長さ)距離と現地の距離と、目測、または歩測で大体確認する。

・建物図面と現地の建物の形が合っているか確認する。

部分的に増築されている場合は、増築されている部分がそれまでの建物と同一使用されている場合は安心である。たとえ未登記であっても安心していいでしょう。

・増築部分が大きく、それまでの建物と壁等で区分されていて、別個の建物と見える場合は注意する必要がある。区分建物が新築されて、所有者が別人かもしれない。
もしそれが正しければその競売はやめた方が無難である。

・また付属建物として別棟で増築されていて、未登記の場合がある。この場合、便所
物置等で誰が見ても付属建物として使用していることが明らかな場合は、付属建物は主たる建物の処分に従うという大原則があり、安心である。

・しかし、これが「離れ」等で、人が居住する部屋があり未登記の場合は、注意が必要である。所有者が第三者のときは裁判しなければならなくなる。

・表札を確認する。借家人の名前になっているか?
 
・借家人と会って話を聞いてみる。

山田は表札を確認した。借家人の名前だった。
借家人とあって話をすることが気が進まなかった。結局そのまま引き揚げた。                            (続)



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